【民泊を学ぼう】オーバーツーリズムと民泊 Vol.1

オーバーツーリズムは、観光地に過度な観光客が押し寄せることで、地域住民の生活や自然環境、景観などに負の影響を与える状況です。民泊も地域社会と密接な関係があり、持続的な観光推進を進めていく上でその立場を深く考えていかなければなりません。民泊はオーバーツーリズムにどのような影響をあたえるのでしょうか。

浅草寺
2023年10月の浅草寺の様子。インバウンド需要は完全に回復し、平日休日問わず観光客が押し寄せている。

オーバーツーリズムの原因は?

オーバーツーリズムが話題になっている背景は、すでに一定地域の爆発的な観光客の増加によって、観光地の環境や住民の生活に悪影響が出ているからです。オーバーツーリズムの原因としては、以下のようなものが考えられます。

  • 円安
  • アジア圏の中間層の旅行客の増加
  • 訪日ビザの緩和、免税、水際対策の緩和などによる訪日外国人旅行者の急増
  • SNSの普及による局地的な集客

国内外の観光需要は急速に回復し多くの観光地が賑わいを取り戻している一方、観光客が集中する一部の地域や時間帯等によっては、過度の混雑やマナー違反による地域住民の生活への影響や、旅行者の満足度低下への懸念が生じています。民泊も知らずのうちにオーバーツーリズムへの手助けをしてしまっているのでしょうか?

民泊に対する誤解①オーバーツーリズムの原因

オーバーツーリズムには”観光客が一定の地域に集中する”という「原因」と、オーバーツーリズムが引き起こす「弊害」の2つの問題が存在します。

「宿泊単価の安い民泊やゲストハウスが大幅に増え、オーバーツーリズムを引き起こしている」というニュースを耳にしますが、オーバーツーリズムの「原因」として民泊を取り上げるのは少し違います。今こそ民泊への注目が再燃していますが、コロナの影響もあり民泊の件数はここ2-3年で一度減少しています。(観光庁報道発表資料「住宅宿泊仲介業者等が取扱う民泊物件数について」によると2023年の稼働民泊数は112,878件、2023年は92,429件と直近2年間の間に2万件減少していることが分かります。)オーバーツーリズムはあくまでも局地的な観光客の爆発的増加が原因となっていて、民泊がオーバーツーリズムを誘引しているわけではありません。

観光庁「令和5年3月末時点における住宅宿泊仲介業者等が取扱う民泊物件数について」
観光庁「令和5年3月末時点における住宅宿泊仲介業者等が取扱う民泊物件数について」

民泊に対する誤解②ゴミの不法投棄

オーバーツーリズム問題の中で特に話題に挙げられるのがゴミの不法投棄です。ゴミの不法投棄はオーバーツーリズムの「弊害」にあたる部分ですが、こちらも世間では「外国人が地域内でゴミを不法投棄する機会が増えた」などの声があります。ここでも誤解がありますが、民泊事業者はごみの処理について非常に敏感です。民泊からでるゴミは事業系ゴミと分別されるため、事業者はあらかじめ計画されたゴミ処理方法をもってゴミを廃棄します。管轄行政庁も特にゴミの投棄に対しては厳しく、管理を怠っていることが発覚した場合は民泊施設自体が処分の対象になる場合もあります。ここで肝心なのは、近年の民泊を利用するインバウンドゲストは、そのルールをおおむね承知しており、むしろ率先してごみの廃棄方法について事業者が質問を受けたり、日本の美化意識に沿って滞在する傾向があります。つまり民泊ゲストによる住宅地域でのごみの不法投棄が問題になる可能性は「民泊事業者の職務の怠慢」を除けば非常に少ないケースです。オーバーツーリズムにおけるごみの不法投棄はあくまでも観光地域の人口密集状態が生み出す処理体制の欠如が原因と考えるべきです。

民泊による「私有地不法侵入」のリスクは確かに増えている

しかし、一部の「弊害」については民泊も関係がないとは言えません。オーバーツーリズムによる地域社会でのトラブルとして紹介されている一つが、インバウンドゲストの敷地内への不法侵入です。商業地域ではない完全な住宅地域での民泊が増えた今、確かにこのリスクは存在しますし、民泊オーナーとしては頭を悩ます問題です。空き巣や強盗・痴漢など悪意を持った侵入を除いた場合でも、インバウンドゲストは敷地境界の認識があいまいで、ついつい施設の境界を超えて立ち話や電話、最悪な場合路上喫煙防止条例区域内での喫煙などの行為を行いがちです。(確かに、住んでいる家の目の前で外国人同士が世間話をしているだけで少し怖い気もします。)

因みに、民泊ゲストが私有地に不法侵入すると、どのような罪に問われるかは、侵入した場所や目的によって異なります。一般的に、以下のような罪が考えられます。

  • 住居侵入罪
    • 人が現に居住している住居に無断で侵入すると、刑法第130条により、3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処されます。
  • 建造物侵入罪
    • 人が住む住居ではないが、他人が事実上管理支配しているビルや学校などの施設に無断で侵入すると、刑法第130条により、3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処されます。
  • 不法占拠罪
    • 他人の土地や建物を占拠し、権利者の排除を図ると、刑法第261条により、3年以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。
  • 不法侵入罪
    • 他人の土地や建物に無断で侵入し、権利者の利用を妨害すると、刑法第261条の2により、2年以下の懲役または20万円以下の罰金に処されます。

民泊ゲストが私有地に不法侵入すると、これらの罪に加えて、民泊の提供者や権利者との民事訴訟や損害賠償請求にも直面する可能性があります。 また、不法侵入の事実が発覚すると、民泊の利用を禁止されたり、悪評が広まったりするおそれもあるため、民泊ゲストの行動管理には細心の注意が必要です。

【民泊を学ぼう】オーバーツーリズムと民泊②へ続く)

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